「A Time For Love」 ジャズの世界で、ライブ演奏の即興性と卓越した技術をこれほどまでに体現したアルバムは、オスカー・ピーターソンの「A Time For Love」をおいて他にありません。 この名盤は、1987年秋のツアー最終公演での録音であり、ギタリストのジョー・パス、ベーシストのデイヴ・ヤング、ドラマーのマーティン・ドリュー、そしてジャズの伝説的存在であるピーターソン自身による夢のようなカルテットを特徴としています。このアルバムは、即興演奏と音楽的対話の真髄を祝う作品です。ベーシストのデイヴ・ヤングが「セットリストはなかった。
ただステージに出て、演奏を楽しむだけだった」と語るように、ミュージシャンたちの息の合ったシナジーは録音を通じて感じられ、ピーターソンのイントロに続く一音一音がまさに冒険のようです。 「Sushi」のハイテンポなエネルギーから、「A Salute To Bach」の複雑なビバップのアレンジまで、このアルバムは喜びと技術的な輝きを放っています。しかし、このアルバムはテンポの速い曲だけではありません。
「Love Ballade」や感動的な「When You Wish Upon A Star」のような楽曲では、ミュージシャンたちの繊細で感情豊かな一面が際立ち、一つひとつの音が空気を優雅に漂うような美しさを感じさせます。 さらに、20分を超える「Duke Ellington Medley」では、ジャズの本質である協力、革新、そして心に響く音楽的対話が見事に表現されています。 「A Time For Love」は単なるアルバム以上の存在です。これは、4人のマスターが力を合わせ、個々の技術を超えて創り出した一つの歴史的瞬間です。 この録音を聴くことは、まるで長年の友人同士の対話を間近で聴いているかのような感覚を与えてくれます。そこには、生き生きとした創造性、そして果てしないエネルギーが詰まっています。